松本崇 『恐慌に立ち向かった男 高橋是清』

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☆☆☆

高橋是清を描く史伝…では全く無いので注意!

戦前を財政面から語る「概説書」に近いです。題名にあるような史伝を期待すると爆死すること間違い無し。高橋是清自体がろくすっぽ登場しないという…。天下の中央公論社にあるまじき「題名詐欺」でしょう。

歴史小説の延長として読むのは厳しいっす。元々の記事が財務省の広報紙に連載されていたものですから。キャラクターを語る云々の場面はほぼ皆無。エンタメ性は無い!と申し上げておきましょう。

とはいえ、高橋是清の伝記を期待しなければ、読みごたえはある本です。文章はそこそこ読みやすいし、財政面にしぼって書かれているので、「有名な事件」の背景を知る楽しみはあります。情報量は、近代史に強い中公文庫の中でも指折りなので、読み返すたびに発見がある本でもあると思います。近代ファンは、とりあえず買っておいて、積読しておくのも手でしょう。(邪道ですいません)

中公「新書」に近い題材でしょうが、難易度は高いです。大学受験レベルの日本史通史は「知ってて当たり前」な感じで進みます。人物本位で歴史を攻める方(私もそうですが)は苦戦するでしょう。

題名は何とかならんかったのか、とは思いますが、近代ファンは手を出す価値(とりあえず持っておく価値)は感じられました。城山三郎ファンの方には特にオススメ。

※高橋是清の「歴史小説」は南條範夫の『達磨宰相・高橋是清』が一押しです。高橋のポジティブなキャラクターが魅力的な一冊です。
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Date: 2012.05.17 Category: #新書本など(歴史) Comments (0) Trackbacks (0)

三好徹 『孤雲去りて 板垣退助』(全2冊)

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☆☆

板垣退助を描く歴史小説。

誰でも名前は知っている人物ですが、彼を主人公にしてるのは本書くらいのものでしょう。そういう意味では中々貴重です。

土佐藩の軍事指導者だった板垣が、なぜ自由民権運動に身を投じたのか。非常に丁寧に描かれています。文章力はさすが三好徹といったところ。読み手の実力を選ばない「説明力」は本書でも健在です。

ただ、小説としての面白さはイマイチです。

とにかく「概説」が多すぎます。本当に主人公として板垣が語られるのは、下巻の後半くらいから。せっかく彼を主人公にしてるんだから、もっと本書にしか出せない色が欲しかったですね。

それ以上にガッカリしたのは物語が「岐阜事件」(板垣の暗殺未遂事件。「板垣死すとも…」で有名。)で終わってしまうこと。著者いわく「その後の人生には特に語るポイントは無い」。

……
うーん。納得いかない…。だって板垣はその後40年近く生きるんですぜ。それをあんな形でカットって。

なんかね、告白しちゃってますよね。「ネタ的に板垣は面白くない」って。主人公に選んでおいて、ラストでそれはありなのか?

三好徹らしからぬ一冊。なんかテンションが低いんですよ。この本…。
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Date: 2012.05.12 Category: 三好徹 Comments (0) Trackbacks (0)

柳田邦男 『狼がやってきた日』

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☆☆☆☆☆

1972年のオイルショックを描くノンフィクション。

東日本大震災以降、どの本屋にも「今こそ読むべき本」が並んでいますが、本書はその最もたるものだと思います。

オイルショック…。高度経済成長を終焉させたこの「事件」は驚くほど東日本大震災と似てるんです。エネルギー危機、小売業界の混乱、マスコミの煽り、計画停電等々、すでに日本は経験していました。(その経験は生かされませんでしたが)

話題性だけでなく、フィクションとしての完成度もトップクラスです。

当時を語る現場の人間がとにかく多い!通産省を中心に、石油ディーラー、マスコミ、小売業、そして田中角栄内閣。
さすが、柳田邦男。足で稼ぐ情報が生きています。これだけ多くの「思惑」を拾っているんだから、当然説得力を持つというものです。

時代性を除外しても、名作であることに変わりないと思います。全ての近代史ファンにおすすめ。
Date: 2012.05.05 Category: 柳田邦男 Comments (0) Trackbacks (0)

広瀬隆 『東京に原発を!』

☆☆☆

ハッキリと「反原発」を打ち出している本です。題名がワイドショーっぽい?いえいえ、内容はとても真面目です。

本書のウリは「原発の後半プロセス」、つまり使用済み核燃料の問題について詳しいところにあります。ご存知のように、こいつの処理は厄介を極めます。何しろ「超」の付く危険物質の上に、根本的な廃棄方法は未だ開発されてないのですから。

岩塩の中に閉じ込める?数万年間?一体誰が「墓守」をするんでしょう。そして、一体誰が責任を取るのでしょうか。

本書が上梓された80年代半ば、すでに核のゴミは「どうにもならない」問題になっていました。では、あれから30年ほどたった現在は…?

原発は事故が怖い?いやいや、事故も怖いですけれど、核のゴミもやばい。存在するだけでやばいんです。原発は。

21世紀の現在でも新しさを失わない一冊。重ーいですが、題名に引かれたら手に取ってみてください…。
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Date: 2012.05.05 Category: #新書本など(その他) Comments (0) Trackbacks (0)

塩野七生 『十字軍物語3』

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☆☆☆

シリーズ完結編。

エルサレムを奪回したサラディンに対し、キリスト教側も十字軍最大の英雄が登場します。ご存知「ライオン・ハート」リチャード一世。まさに飛車角そろい踏み。スキピオ対ハンニバルの再来。名勝負数え唄じゃー!とめちゃくちゃ期待してたんですが…。

まあ、びっくりしたのが、本作が完結編だったこと。全4巻シリーズって、『絵で見る十字軍物語』を含めてだったんですね…。うーん。ハッキリ言って残念。

というわけで、今作で第三次十字軍からアッコン陥落まで語られます。前の2冊と比べると、ダイジェストっぽくなるのは否定できないところ。また、第4次と第6次は、それぞれ別作品で語られてしまってるんですよね。内容もほぼ同じ(焼き直しと言った方が正しいか)で、ちょっとファンサービスの不足を感じました。

私は塩野信者で、本作も☆五つ!を期待して買っただけに、やや残念なラストでした。ドレを出すな、とは言わないけれど、やっぱり文章を読みたかったよ。もっと。

シリーズを買ってた方は特攻して問題ないですが、今から手を出そうと迷ってる方は…。もうちょっと迷うのも一つの手かもね。

それにしても、『ローマ人の物語』が完結し、『十字軍物語』も完結してしまいました。塩野のシリーズものが無いと、ハードカバーコーナーを見る楽しみが無くなっちゃうじゃないか。というわけで…

次回作は「古代エジプト」を希望!(無茶振り)

超変化球で、戦後の日本政治でも良いよ(チラッ
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Date: 2012.05.04 Category: 塩野七生 Comments (0) Trackbacks (0)
プロフィール

Marimo Saitama

Author:Marimo Saitama
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・幕末~昭和の歴史小説の感想を垂れ流します。

・司馬遼太郎信者です。吉村昭と塩野七生も大好きです。

・好きな人物
高杉晋作、大村益次郎、大久保利通、桐野利秋、原敬、高橋是清、石光真清、広田弘毅、吉田茂

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