松本崇 『恐慌に立ち向かった男 高橋是清』

☆☆☆
高橋是清を描く史伝…では全く無いので注意!
戦前を財政面から語る「概説書」に近いです。題名にあるような史伝を期待すると爆死すること間違い無し。高橋是清自体がろくすっぽ登場しないという…。天下の中央公論社にあるまじき「題名詐欺」でしょう。
歴史小説の延長として読むのは厳しいっす。元々の記事が財務省の広報紙に連載されていたものですから。キャラクターを語る云々の場面はほぼ皆無。エンタメ性は無い!と申し上げておきましょう。
とはいえ、高橋是清の伝記を期待しなければ、読みごたえはある本です。文章はそこそこ読みやすいし、財政面にしぼって書かれているので、「有名な事件」の背景を知る楽しみはあります。情報量は、近代史に強い中公文庫の中でも指折りなので、読み返すたびに発見がある本でもあると思います。近代ファンは、とりあえず買っておいて、積読しておくのも手でしょう。(邪道ですいません)
中公「新書」に近い題材でしょうが、難易度は高いです。大学受験レベルの日本史通史は「知ってて当たり前」な感じで進みます。人物本位で歴史を攻める方(私もそうですが)は苦戦するでしょう。
題名は何とかならんかったのか、とは思いますが、近代ファンは手を出す価値(とりあえず持っておく価値)は感じられました。城山三郎ファンの方には特にオススメ。
※高橋是清の「歴史小説」は南條範夫の『達磨宰相・高橋是清』が一押しです。高橋のポジティブなキャラクターが魅力的な一冊です。





